The Superconducting Antenna

超 伝 導 ア ン テ ナ

Joe Speroni, AH0A/7J1AAA著

Kensuke Nakajima, JA0RYN 訳

 

それは、Ed Coan (AH7L/7J1AAE)がパソコンを使って書いたアンテナパターンから始まります。TIARAメンバーの幾人かは、むしろ後ろ向きとも言えるようなまん丸いパターンのアンテナを使っていますが、やっぱり問題は如何に良いアンテナが必要かといことなんです。Edのアンテナは見るからに良さそうで、実際、結果もそれを証明しています。彼は、サンスポット数なんてお構いなしに、ColoradoとMaineを相手にスケジュールQSOをしているんですから、私のちっぽけなビームアンテナなんて比べものになりません。

そこで、我々アパート住まいに何ができるかと考えてみると、スペースが問題だっていうことになってしまいます。どうやって、バルコニーにフルサイズのビームを置こうっていうんでしょう?・・・ローディング・コイルがその答えであり、また同時に、長さをリアクタンスで置き換えるにつれて放射抵抗が下がっちゃうという問題でもあるわけです。大電流が流れて、電力は放射されずにアンテナの中で消費されてしまいます。もし、アンテナが全く電力を消費しなかったら・・・Hmmm...ちょっと待てよ、P=I×I×R・・・もしRがゼロなら...

私は仕事の関係で東京大学の研究グループとちょっとした関係があります。幸いなことに私はそこの学生である日本人のハムを知っていました。私の頭を駆けめぐったのは超伝導アンテナを作ろうというひらめきでした。そのためには低温工学が必要です、なぜなら温度が摂氏−269℃近くにもなるからです。私は、このプロジェクトに興味を持つ大学の仲間を得て、シリコンウェハー上に試験的な10mダイポールを作ることができました。彼らは、ウェハー上に沢山の直列コイルをつなげていき、そして超伝導ダイポールを手にしたのです。私は、最初の実験をするために私のTS930を研究室にもっていきました。が、テストをする前に、なんと測定の結果、共振周波数が3126KHzだったんです。どうも超伝導材料では通常のインダクタンスの式が通用しないようです。常温と同じ結果を得るためにはずっと少ないターン数しか必要ないってことです。[訳者註]

結局、何回もの測定と試験の繰り返しの後、10mに共振するウェハーを得ました。そのときには1枚のウェハー毎に40エレメントビーム一対を乗せ、そして4枚のウェハーをスタックに組み上げました。それは、なんと半フィート(15cm)角の立方体よりも小さい320エレメントアレイになったんです。

最初のテストは上手く行きませんでした。私はTS930を超伝導ウェハーアンテナにつないで10mにチューニングしました。室温だと何も聞こえませんでした。冷却器を使って、研究室の技官が温度を超伝導領域に下げていきました。私は、その小さな機械にいたく感動して、これならシャックにも置けるんじゃないかと考え始めていました。ちょうどそのとき・・・TS940が・・・凍っちゃいました。これではリグの動作に支障があります。その後は、そう簡単ではなく同軸の接続法に工夫が必要でした。

私たちは、誘導結合を使うようにウェハーを作りなおし、また、RFは通すが熱は通さない導電性セラミックを使って十分効率良く結合させる方法も見つけました。もしかすると京セラがこの件に関して何らかの発明をものにしたかもしれません。

TS940は秋葉原のハムショップに持っていって修理を頼みました。その店のサービス主任の鈴木さんは、「どうして同軸コネクター周りの塗装がはげちゃったの、もしかすると落雷?」と聞いてきました。私は、「違うよちょっと低い温度の所に置いたもんだから」とだけ、どれほどの低温だったかは言わずに答えました。そのプロジェクトは秘密にしておく必要があったし、どっちにしても鈴木さんは何でも直してくれますから。

TS930が直るまで暫くかかりそうだったので、私は代わりにTS940を持ち込みました。それに新しいFT1000も注文しておきました。超伝導アンテナが10mに共振していることを確かめてからTS940につなぎました。例のセラミックスは上手く働いて、今度は冷却が始まってもリグはちゃんと動作していました。アンテナが−150℃のときには、バンドはほとんど死んでいるようでした。アンテナを超伝導状態にするにはさらに10分ほどかかったでしょうか・・そして・・TS940はいきなりぶっ飛んでしまったんです。どうもアンテナ利得が大きすぎてTS940のフロントエンドの許容限界を越えているようでした。後から100dBのアッテネータを入れて測定したときには同軸出力端の高周波電圧が5Vに達していました。信じがたいことです。でも、こんな超伝導集積回路アンテナについて一体どれだけのことが分かっているというのでしょう?

TS940はまた鈴木さんのところに持ち込まれましたが、今度は彼もさすがに怪訝な表情でした。フロントエンドの基盤が落雷にやられたようになっていたんですから。でもご心配無く、鈴木さんは何でもちゃんと直してはくれます。それに、FT1000がちょうど良いタイミングで届き実験を続けることができました。我々は、受信機を保護するためのQSKアッテネータを作り、いよいよ10mで交信に挑戦することにしました。で、そいつを動作させたときの驚きといったら・・なんと、我々が最初に聞いたのは、数局のW2がまるでローカルのように交信している様子でした。しかも、80dBのアッテネータを入れてですよ。アンテナアレイは回転台の上に置かれていたんですが、1度も動かすとW2達は全く聞こえなくなりました。なんていうビーム幅でしょう。もう一度聞くとちょうどファイナルを送っているところでしたので、交信してみようってことになり、リグをダミーにつないで50Wに調整してから超伝導アンテナに切り換えてN2BAをコールしました。そのとき、、ものすごい騒音と共に稲妻がアンテナから放射され建物の壁にぶちあたりました。バンドの隙間で一声出す前に研究室の壁の一角を取り外しておく必要がありそうです。これまで3次元空間でアンテナパターンがどうなっているか何てことは考えたことはありますか?なんと、研究室の壁には円周1cm位の丸い穴が開いていたんです。我々は、直ぐさまパワーを絞りました。N2BAが数分後に出てきてバックアップのリグを使っていると話していたところをみると、どうも何らかの理由でメインリグが使えなくなったようでした。そして、なぜだかは良く分かりませんが、N2BAの交信相手の局は2度と戻ってこずじまいだったので、我々は何が起こっているのかはっきりするまで送信はしないことにしました。言えることは、そのアンテナアレイのゲインがDP比で120dBもあり、ビーム幅は60dB減衰幅で0.75度だということです。50Wの電力に対してビームの中心での有効放射電力は55×10の13乗ワットにもなります。

我々が作ったものが大学当局の知るところとなった途端、このプロジェクトは我々から取り上げられ、そっくり自衛隊に移管されてしまいました。アマチュアの無線屋達が何かに貢献したみたいですが、それが本当は何だったのかは良く分かりません。私自身はそのウェハーが何だったのか、どうやって動作するのか、どうやったらもう一度作れるかっていうことをこれっぽっちも知らないんです。

1997年4月1日

 

[訳者註]:これは、カイネティック・インダクタンスという超伝導体に特有な現象で、超伝導体の温度が超伝導臨界温度に近づくと顕著になります。→本当

Original article was written by Joe Speroni AH0A/7J1AAA and translated by Kensuke Nakajima, JA0RYN/7. In fact, we already have seen laboratory models of superconducting antenna arrays. It is my dream as a superconducting researcher to realize a desktop 160m antenna, Hi. I express my gratitude to Sandy W7BX who forwarded this article to me and permitted the reproduction on the April issue of the Bulletin of JA0 DX GANG.